前回は、「かなり詳しい因数分解の解き方─基本編③平方根と解の公式」を考えました。
今回はこれまでの応用編です。
整数で割れる場合
なるべく数字を小さくする
全体的に数字が大きいと難しく感じるものです。最初の段階でなるべく数字を小さくしておきましょう。
こんな問題はどうでしょうか。
\[3x^2-27x+24=0\tag{1}\]
共通因数の3でくくってもいいですが、方程式なので両辺に同じ処理をするなら等式は保たれることから、この際両辺を3で割ることにします。従って式(1)は、
\[x^2-9x+8=0\]
左辺を因数分解して、
\[(x-1)(x-8)=0\]
よって、
\[x=1,8\]
となります。
二次方程式の問題で、両辺をある数で割る場合には注意すべきことがありますので、以降で取り上げましょう。
文字で割るのはNG!
たとえば、
\[x^2-2x=0\tag{2}\]
のような問題で、両辺を「 \(x\) 」で割るとどうなるでしょうか。
式(2)の両辺を「 \(x\) 」で割ると、
\[x-2=0\]
よって答えは、「 \(x=2?\) 」で良いかと言うと良くありません。
なぜかというと、もし「 \(x=0\) 」だとすると両辺を 0 で割っていたことになり、それは数学のルール違反(0で割るのは禁止)だからです。それで不完全な解答になってしまいました。
正しくは、共通因数「 \(x\) 」でくくって、
\[x(x-2)=0\]
よって答えは、
\[x=0,2\]
です。
数字で割るのはOKですが、文字で割るのはNGです。
0 で割るのが禁止である理由
この項目は、単なる読み物として流してもらって大丈夫です。
たとえば、12をいろいろな数で割ってみましょう。
12を3で割ると、\(12\div3=4\)
12を2で割ると、\(12\div2=6\)
12を1で割ると、\(12\div3=12\)
もっと小さい数で割ってみましょう。
12を0.5で割ると、\(12\div0.5=24\)
12を0.1で割ると、\(12\div0.1=120\)
12を0.01で割ると、\(12\div0.01=1200\)
もっともっと小さい数で割ってみましょう。
12を0.001で割ると、\(12\div0.001=12000\)
・・・
12を0.0…01で割ると、\(12\div0.0…01=120…00\)
この先がどうなるか予想すると、
12を0に限りなく近い数で割ると、\(12\div0に限りなく近い数→∞\)
割り算の答えがおそらく∞(無限大)になり、有限の値からはみ出してしまいます。
そうなると様々な弊害が生じるので、「0で割るのは禁止」になっています。
0で割ると弊害が生じる例
この項目も、さらっと流してもらってOKです。
たとえば、次のような問題があったとします。
\[3(x-2)+3=2(x+1)-4\tag{1}\]
両辺をそれぞれ展開して計算すると、
\[3x-6+3=2x+2-4\]
\[3x-3=2x-2\tag{1′}\]
両辺をそれぞれ因数分解すると(この手順が通常とは異なるので、これがつまずきのもとではあります。通常はすべて左辺に移項して、・・・= 0 の形にしなければなりません。)、
\[3(x-1)=2(x-1)\tag{1”}\]
両辺を「 \((x-1)\) 」で割ると(本当は割ってはいけない…理由:(x-1)が0かも知れないから)、
\[3=2\]
となり、意味不明な等式になってしまいます。これは、0で割ってしまったからです。
実際、式(1’)をこれまでどおりの手順で解くと、
\[3x-3=2x-2\tag{1′}\]
\[3x-2x=-2+3\]
\[x=1\]
こうなるはずでした。
ここで、「 \(x=1\) 」なので、「 \(x-1=0\) 」ですね。
つまり、式(1”)\(3(x-1)=2(x-1)\) で、両辺を見事に0で割ってしまっていたということです。それでおかしなことになったのです。
両辺を文字で割るのはやめましょう。
整理が必要な場合
問題がいつも、「・・・= 0」になっているとは限りません。そういう場合は、自分が慣れた形に一旦整理する必要があります。
こんな問題はどうでしょうか。
\[2x+4=x^2-11\]
最初に移項して、
\[2x+4-x^2+11=0\]
整理すると、
\[-x^2+2x+15=0\]
となりますが、先頭に「-」がついているとやりにくいので、両辺に「 \(-1\) 」を掛けて、
\[x^2-2x-15=0\]
因数分解できますね。
\[(x-5)(x+3)=0\]
\[x-5=0,x+3=0\]
\[x=5,-3\]
となります。
計算(展開)と整理が必要な場合
更に、整理する前に展開する必要のある問題もあります。難しくはありませんが、コツコツやる必要があります。
こんな問題です。
\[2x^2-3-8x=(x-3)^2-9\]
まず右辺を展開します。
\[2x^2-3-8x=x^2-6x+9-9\]
右辺を左辺に移項します。
\[2x^2-3-8x-x^2+6x=0\]
ここで、計算・整理します。
\[x^2-2x-3=0\]
因数分解して、答えを出します。
\[(x-3)(x+1)=0\]
\[x=3,-1\]
となります。
次回に続きます。