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かなり詳しい因数分解の解き方─応用編③工夫が必要な問題

前回は、「かなり詳しい因数分解の解き方─応用編②置き換え」を考えました。

かなり詳しい因数分解の解き方─応用編②置き換え
前回は、「かなり詳しい因数分解の解き方─応用編①共通因数」を考えました。 今回はその続きです。 置き換え + 因数分解の公式 考えやすいように何らかの形に置き換えてから、因数分解の公式等を適用する問題です。 手際よく...

今回はその続きです。

因数分解で、解くのに工夫が必要な問題

因数分解の問題の中には、共通因数でくくったり因数分解の公式を使おうとしてもすぐには解けない問題があります。そのような場合はどうすればよいか考えます。

次数の一番低い文字について整理する

普通に解けそうにない問題に直面したときに最初に取り組むべきことは、「次数の一番低い文字について整理する」ことです。これは高校で習う因数分解でも通用する大事な考え方です。

こんな問題です。

\[a^2+bc-ab-ac=?\]

この問題は共通因数がありませんし、因数分解の公式を当てはめるのも難しそうです。
そこで、「次数の一番低い文字について整理」してみます。

a の次数は2、b の次数は1、c の次数は1なので、b か c のどちらかで整理します。今回は b で整理することにします。そうすると、

\[a^2+bc-ab-ac=(bc-ab)+(a^2-ac)=b(c-a)+a(a-c)\]

となります。

ここで、何となく「 \((c-a)\) 」と「 \((a-c)\) 」が怪しそうですね。これらは実は共通因数です。なぜなら、

\[a-c=-c+a=-(c-a)\]

と書き換えられるからです。
それで、こうなります。

\[b(c-a)+a(a-c)=b(c-a)-a(c-a)\]

そして、「 \(c-a=A\) 」と置いて計算を進めてみましょう。

\[b(c-a)-a(c-a)=bA-aA=A(b-a)=(c-a)(b-a)\]

従って、

\[a^2+bc-ab-ac=(c-a)(b-a)\tag{1}\]

となります。

因数分解の公式①を使ってもできます・・・

この問題は因数分解の公式①を使ってもできます。
まず、a について整理して、
\[a^2+bc-ab-ac=a^2+a(-b-c)+bc\]
ここで、因数分解の公式①です。
「足して-b-c、掛けて bc 」になる2数を探せばよいということになりますが、それは「-bと-c 」です。
それで、こうなります。
\[a^2+bc-ab-ac=a^2+a(-b-c)+bc=(a-b)(a-c)\tag{2}\]

式(1)と式(2)で結果が違う?・・・

よく見ると、式(1)と式(2)で結果が違うように見えますが、実はこれらは同じです。
式(1)の結果から変形していくと、式(2)になります。
\[(c-a)(b-a)=\{-1\times(a-c)\}\{-1\times(a-b)\}\]\[=(-1)^2\times(a-b)(a-c)=(a-b)(a-c)\]
めでたし、めでたし。

一部分だけ因数分解の公式を適用する

項がたくさんあって、因数分解の公式をそのまま当てはめることができない問題の中には、まれに、「次数の一番低い文字について整理」してもうまくいかない問題があります。そういう場合は、とりあえず「一部分だけ因数分解の公式を適用する」ことにします。正解にたどり着くにはある意味ひらめきが必要な問題であり、数学的センスが求められる一番難しい部類の問題です。

こんな問題です。

\[x^2+2xy-x+y^2-y=?\]

この問題は、「次数の一番低い文字について整理」しようとすると、x も y も両方共次数が2ということでどちらで整理してもよいので、ひとまず x で整理することにすると、

\[x^2+x(2y-1)+y^2-y=?\]

となってしまい、このあとが続きません。
それで仕方がないので、「一部分だけ因数分解の公式を適用する」ことにします。

因数分解の問題に慣れてくれば、大体の方針が立つとは思います。この問題の場合は、「 \(x^2+2xy+y^2\) 」の部分を因数分解してみたい気持ちになるでしょう。ではやってみましょう。

\[x^2+2xy-x+y^2-y=x^2+2xy+y^2-x-y=(x+y)^2-(x+y)\]

偶然にも共通因数「 \((x+y)\) 」が出現しており、この先も計算していけそうですね。というか、そもそも出題者がうまくいくように作っているわけですが。

では続きをやってみましょう。
共通因数がありましたね。今回は文字で置き換えず、脳内置き換えで行きます。

\[x^2+2xy-x+y^2-y=x^2+2xy+y^2-x-y=(x+y)^2-(x+y)\]\[=(x+y)^2-1\times(x+y)=(x+y)(x+y-1)\]

これで解くことができました。

置き換えを2つする

ちょっとややこし目のものを一つやっておきましょう。置き換えが2つ出てくる問題です。

\[(a+b)(x+y)^2-2(a+b)(x+y)+a+b=?\]

長くて嫌な感じですが、置き換えをするとどうってことありません
「 \(a+b=A\) 」「 \(x+y=X\) 」と置いてみましょう。

\[(a+b)(x+y)^2-2(a+b)(x+y)+a+b=AX^2-2AX+A\]

これを因数分解します。

\[AX^2-2AX+A=A(X^2-2X+1)=A(X-1)^2\]

そして、復元します。

\[A(X-1)^2=(a+b)\{(x+y)-1\}\]

従って答えは、

\[(a+b)(x+y)^2-2(a+b)(x+y)+a+b=(a+b)(x+y-1)\]

となります。

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